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われのない批判や中傷に苦しまなければならないであろう。そこで、日本にはなぜ犯罪や訴訟が少ないのか、それは日本だけの特殊な現象なのか、世界の文明国で訴訟が少ない国は日本以外にはないのかを調べてみた。

そうすると、ノルウェーでは、人口あたりの訴訟件数は日本の半分しかないことが分かったのである。では、ノルウェーに何があるのかを調べたところ、ノルウェーでは、各市町村毎に少なくとも一つの調停委員会が置かれており、民事裁判を提起するためには、まず、調停委員会にかけなければならないという規定があり、調停にかけないでいきなり裁判を提起しても受理されない。そして、この調停委員会においては、弁護士などの法律家は調停委員になれないし、当事者も弁護士を伴って出席することも禁じられているのである。すなわち、ここでは、法律という枠組みにとらわれないで、市町村の伝統的な連帯意識、ゲルマン民族の慣習そして将来の人間関係という要素を考慮しながら、紛争を解決する仕組みが存在し、ここで紛争の約半分以上が解決されているのである。ノルウェーには、刑事事件についても、軽微な事件については、被害者と加害者が損害補償に合意した場合には、起訴しないという仲裁委員会というものが、市町村毎に置かれており、これによって起訴される犯罪件数が抑制されているという事情がある。

そこで、ノルウェーの調停委員会制度と日本との共通点を探してみると、日本には、確かに調停委員会という制度はないが、紛争の大部分が行政相談や都道府県や市町村の市民相談で解決されているということ、更に民事紛争の7割が和解によって解決されているという実態に注目しなければならないのではないかということに気づいたのである。おそらく、日本ほど大規模に行政相談や市民相談を制度化している国はないのではないかと思われる。これは、西欧では、個人の自律性ということを基盤に社会が成立しているのに対し、日本では相互依存性を基盤としており、困ったことは助け合うという機能を自治体が担っていることにあるのではないかと思われるのである。

具体的には、行政相談以外に、大阪府では、建築相談、労働相談、老人福祉、消費者相談など三十以上の専門的な相談窓口があり、各市町村にも、教育相談、住宅相談、法律相談、家族相談など十以上の窓口がある。そして、訴訟が提起される前に、そういった窓口である程度淘汰されていること、それからそういう窓口では、紛争の円満解決を目指しており、個人の権利とか正義という抽象的理念ではなく、紛争当事者を市民の一員として統合するためにどうすればよいかという点を基準として相談が行われているということを考えると、ノルウェーにおける調停委員会と共通する面があるのではないかと思われるのである。

各国にオンブズマン制度が発達しているといっても、それは、単に官公庁に対する苦情を受理するに過ぎず、しかも多くの場合、受理された苦情のうち処理されるのは数%で、残りは管轄外などの理由で却下されているのが平均的実情である。

これに対し、わが国では、国における行政相談、人権擁護相談、税務相談などがあるが、特に注目されるのは、都道府県と市町村が行っている相談業務であって、この中には、私人と企業など、私人相互間の苦情が広く処理されているのが特色である。例えば、交通事故相談、住宅相談、外国人相談、法律相談、育児相談、障害児相談、思春期保健相談、単身家庭相談、高齢者職業相談、女性相談、障害者相談、難病・成人病などの健康相談、職業相談、従業員の教育訓練相談、中小企業相談、商工相談、特許相談、貿易

 

 

 

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